2017年11月20日月曜日

ギリシャ不動産に中国マネー 外国人購入者の4割




ギリシャの居住用不動産の価格は債務危機前に比べほぼ半減した(10月、アテネ【イスタンブール=佐野彰洋】欧州債務危機の震源地だった南欧ギリシャの不動産市場に海外資金が流れ込んでいる。一定額以上の投資で滞在許可を取得できる制度のためだ。特にインフラ分野でも投資が目立つ中国の購入者が4割を超え、両国経済の結びつきの強さが鮮明になっている。危機前のほぼ半値に下がった不動産相場をてこ入れし、景気を浮揚させる効果が期待されている。
 「部屋からはエーゲ海が見える。いい買い物だった」。北京出身の旅行ガイドの男性(34)はアテネ近郊で広さ150平方メートル、築20年の物件を25万ユーロ(約3300万円)で購入した。購入資金は北京の保有物件を売却して賄った。
 購入の動機は「ゴールデン・ビザ」と呼ばれる2013年に始まったギリシャ政府の投資促進策だ。物件購入、建築など25万ユーロ以上の不動産投資で買い手と家族に5年間の滞在許可を与える。

 財政粉飾の発覚をきっかけに債務危機に陥ったギリシャは10年以降、ユーロ圏などの金融支援下にある。引き換えに政府は年金や公務員給与削減などの緊縮策を課され、国民や企業の預金は国外に流出した。経済を浮揚させるための資金は海外からの投資が頼みだ。

 そのため、ギリシャの投資は似た制度を持つ欧州諸国の中で最もハードルが低いとされる。
 滞在許可は物件の継続保有を条件に、更新できる。ギリシャは国境審査なしで往来できる欧州のシェンゲン協定に加盟しているため、欧州連合(EU)の大部分の国を自由に旅行できる。
 ギリシャ政府によると、この制度を利用し17年9月までに不動産を購入した外国人は2014人、投資額や関連収入は10億ユーロを超えた。家族を含む滞在許可の発給も年々伸び、16年は1567人と14年比で8割増えた。
 17年9月までの国別の内訳をみると、中国が購入者で850人、滞在許可で2091人。それぞれ全体の4割以上を占めるトップとなった

 ギリシャでは最大港湾のピレウス港が中国国有海運大手によって買収され、17年6月には中国国有の国家電網がギリシャ国営電力の送配電子会社の株式24%の取得を完了した。民営投資会社の復星集団もアテネの旧空港跡地の大規模再開発に参画する。インフラを中心に両国の結びつきは強まる一方で、不動産も例外ではない。

 不動産広告サイト「スピトガトス」によると、英語版への中国からのアクセスは過去1年で3倍に増加。近く中国語版を立ち上げる。ギリシャ国民の間では厳しい緊縮策を迫るドイツに比べ、雇用を創出してきた中国への感情は良好だ。
 中国に続くのはロシア、トルコ、エジプトといった国々。いずれも強権的な政治体制で知られる。トルコでは16年にクーデター未遂が、エジプトでは13年にクーデターが起きており、弾圧への恐怖、子どもの教育など将来への不安を感じる富裕層が「保険」を掛けている。
 10月発表の改定値によると、16年のギリシャの国内総生産(GDP)成長率は前年比0.2%減。2年連続のマイナス成長を記録した。17年はプラスに転じるものの、追加融資を巡る交渉の遅れが響き、1%台にとどまる見通しだ。

 居住用不動産の価格は危機前の00年代後半に比べほぼ半値の水準で、取引件数も激減した。危機の初期段階で資産防衛目的で高値で購入した世帯も少なくない。不動産融資の焦げ付きは銀行経営の重荷となっている。

 アテネの不動産仲介業、アレクサンドロス・ニコライディス氏は「新築供給の途絶、民泊サイトの普及を背景に物件価格は上昇基調にある。外国人の買いは一段の相場押し上げの原動力になる」と語る。

【港区×高級賃貸×六本木】

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