不動産各社がマンション販売で知恵を競っている。三井不動産系の販売会社は相続税対策を解説し「2室目の購入」を狙う。野村不動産は販売拠点にカフェを併設し、購入者の友人らの需要を掘り起こす。2027年のリニア中央新幹線開業をにらみ、マンション建設が相次いでいることから購入意欲を刺激する一工夫で顧客を呼び込もうとしている。
野村不動産は仮想現実(VR)機器を活用し、内見できる設備を11月に導入(名古屋市中区)
「貯金など金融資産を相続するより、タワーマンションの部屋を購入すれば相続税が安くなる場合もあります」。三井不動産リアルティは名古屋市内にこのほど設けた販売拠点で、税理士など専門家による相続対策セミナーを開いている。
「2軒目、3軒目のマンション購入を考える需要を取り込む」(中部支店の中沢健一次長)のが狙いだ。政府は過度な相続税節税の防止策強化を検討しているが、相続時に有利とみた需要は根強い。セミナールームで説明するとともに富裕層から相続税などについて相談に乗ることで、手ごろな価格帯や立地のマンションの提案につなげる。
野村不動産はマンションを購入予定の消費者だけでなく、購入者の友人らへの提案も狙う。このため同社が販売拠点に併設したのが無料でコーヒーやジュースなどを飲むことができるカフェだ。
同社でマンションを購入した消費者なら本人だけでなく、友人も一緒に無料でカフェを楽しめ「毎日来る人もいる」(同社)という。マンションの外観と共用部分を仮想現実(VR)で体験できる機器も導入した。買い物のときなどに休憩してもらい、マンションに関心を持ってもらう。
セキスイハイム東海(浜松市)が目玉にするのは酸素ルームだ。酸素ルームは新陳代謝を高めて疲労を回復させる効果があるとされ、人気を集めている。同社は名古屋市内の白川公園近くに20年3月に完成予定の高層マンションに入居者専用の酸素ルームを設置する。
同社はモデルルームと営業拠点を兼ねた名古屋本部を8月に開設し、名古屋のマンション販売に進出した。ここで酸素ルームを無料で体験できるようにした。「注文住宅のノウハウを生かし、間取りの変更も柔軟に対応できる。名古屋では高級路線で展開したい」(加藤正明社長)という。
名古屋では地価上昇を背景にマンションも値上がり傾向にある。販売会社にとって都心部に住む富裕層のセカンドハウス購入といった需要をきめ細かく取り込むことが重要になる。(浅山亮、広沢まゆみ)