日本郵政が、不動産大手の野村不動産ホールディングス(HD)買収を検討している。数千億円規模とみられる新たな買収を検討する背景には、2兆円を超える価値を持つ不動産の有効活用を進め、収益力強化の切り札にする狙いがある。
日本郵政は2007年10月の郵政民営化に伴い発足し、日本郵便とゆうちょ銀、かんぽ生命を傘下に置く持ち株会社だ。郵便の取扱量で不振が続く日本郵便を、金融2社の利益でカバーする収益構造だったが、近年は超低金利による運用収益の悪化で、銀行や生命保険業務も伸び悩んでいる。
海外事業の成長を目指して、15年に日本郵便を通じ6200億円をかけて買収した豪州物流会社「トール・ホールディングス」は、経営不振のため17年3月期に4000億円の損失を計上。日本郵政発足以来初の最終(当期)赤字転落を余儀なくされた。政府は保有する郵政株の売却で東日本大震災の復興財源を捻出する計画だが、収益力が低迷したままでは期待した売却益が得られず、復興財源の調達計画にも影響を及ぼしかねない。
こうした中、「数少ない成長分野」(日本郵政幹部)として強化してきたのが不動産開発だ。郵政は、傘下に2万4000以上の郵便局を持ち、保有不動産の価値は2兆円以上にのぼる。既に13年にはJR東京駅前、昨年6月にはJR名古屋駅前に商業施設「KITTE」を開業。不動産開発での収益向上を図っていた。
今回買収の検討を進めている野村不動産HDは中核子会社の野村不動産のほか、不動産投資顧問会社も傘下に置く。日本郵政としては野村不動産が持つノウハウを活用することで、全国の一等地に持つ郵便局の再開発にさらに力を入れ、不動産事業を成長の柱として強化したい考えとみられる。
一方、野村不動産HD株式の33%強を保有する証券大手の野村HDは、財務体質の強化や本業に経営資源を集中させる狙いから、段階的に不動産HD株の売却を進めていた。野村不動産は、三菱地所や三井不動産などの競合他社に比べ保有不動産が少なく、「遊休地を多く持つ郵政との提携は相互に利益がある」(野村HD幹部)との声もある。【工藤昭久、岡大介】
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